ポルシェ911993ターボSのオーディオインストール事例
サウンドプロ自慢のインストール事例を御覧いただけるコーナーです。
豊富な写真と解説、関連の話題などもご覧いただけます。
当店ご利用前の作業レベルの評価や、施工プラン検討の材料としてご活用ください。
<事例No.657以前は税別表記です。読み替えをお願いします>
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事例No.692(お問い合わせの際にお伝えください)
model
ポルシェ 911 993ターボS
system
メインユニット:Nakamich CD500
デッドニング:フロント
フロントスピーカー:PHASS AT20B、FD 0486
リアスピーカー:PHASS NT20B、FD 0486
プロセッサーアンプ:audison AP 8.9bit、DRC-MP
Bluetoothレシーバー:BEWITH RT-1
ケーブル:SAEC、audiotechnica、SUPRA
comment
お悩みを抱えた993のリバイバルプランです♪
元ユニットを活かして、1DINデッキ→8ch DSPアンプ→フロント・リヤともに2wayシステムを組みました。
ポルシェ911の事例紹介です。
言わずと知れたポルシェを代表するスポーツカーです。モデル名は911で固定ですが、年代によって変化する型式も3桁の数字になっているので、このクルマに特に詳しくない方には、いまいち理解しにくく、熱いオーナーさんのトークに、つい生返事で応じてしまうポイントです。
911の初期型は1963年の901型。以降、世界的スーパーカーブームを駆け抜けた930、964、993、996、997、991、992(現行)と歴史を繋げています。
911を語る時、エンジンの冷却方式が一つの基準になることが多いようです。生誕以降、ずっと空冷方式のリヤエンジン・リアドライブの形式をとっており、これは1997年まで生産された993型まで続きました。
常に最新のモデルが一番イケてるという一般的な尺度とは別に、オリジナルの形式をよしとする向きには、「空冷こそが911。」的なコダワリを持った方も多いようです。歴代の911の中でも、空冷最後の993と、一つ前の964の人気が特に高く、ここ4、5はオーナー様方もびっくりな急騰ぶりを演じています。
今回ご登場いただくのは、993型。まさに空冷最後の一台で、さらに希少なターボSモデル。マニアならずとも一度は触れてみたい♪特別な一台です。
オーナー様は、このクルマを10年ほど前にご購入になられたそうですが、お店のおすすめで、2度に渡って変更を加えたオーディオシステムはどうにも馴染めない。というか、なにかおかしいんじゃないか??と疑問を持たれてご連絡いただくに至りました。
この993は、911で初めて(多分)のBOSEサウンドシステムオプション搭載車で、フロント・リヤそれぞれ2wayのスピーカーを外部アンプで駆動する方式をとっていますが、ご購入の際に、お店のおすすめでフロント2wayとリヤとデッキを交換したそうです。
スピーカーは知る人ぞ知る純国産マニアブランドのPHASS。CDデッキはナカミチという、なかなか濃い組み合わせです。
その後、どうも高域がはっきりしないということで再度相談され、PHASSの単品ツイーターを追加し、デッキは(ブルートゥース対応にしたかった理由もあって)ポルシェにお似合いのContinental CD7416UB-ORに変更されていました。
実際にクルマを拝見すると、まともに音が出るはずのない接続方法(本文にて後述)が採られており、オーナー様のお悩みぶりに接して、さすがに同情の念を禁じえませんでした。
それでは心機一転!今あるコンポーネントを全部活かして、キチンと鳴るようにしましょう♪ということであれこれ協議を重ねて、リバイバル・プランを策定しました。
システム概要としては、1DINヘッドユニットをメインソースとして、DSPアンプで増幅・調整して、フロント2way+リヤ2wayを鳴らす内容です。
◯ヘッドユニット
ナカミチのCD500です。車両ご購入時に取り付けられ、Continentalに取って代わられたのを復帰してもらいました。
このデッキは遡ること17年。2004年の発売で、定価は102,900円(税別)でした。
「同社のカーヘッドユニットとして初めてMP3/WMAファイルの再生に対応したCDレシーバ」という触れ込みで発売され、名門ナカミチも圧縮オーディオ対応の機種を出してきた。と話題になったのを記憶しています。
今となってはMP3対応にプレミアム感はありませんが、流石にナカミチ!と新鮮な感動を味あわせてくれたのは、CD再生の品質(音質)です。特にプリアンプの性能の高さがビンビン伝わってきて、久々にいいものを触れさせてもらいました。
ブルートゥース対応という利便性の点では、コンチネンタルも捨てがたいのですが、それはブルートゥースレシーバーを別途用意して補い、高音質追求の原点に立ち返って、ナカミチ再登板で決まりました。
◯DSPアンプ
老舗audisonのprima AP 8.9bit(税込11万円)です。
9chまでのプロセシングに対応して、35wのアンプを8ch分内蔵した定番のDSPアンプです。
アンプ出力を85Wに高めて、192kHz/24bitのビットレートに対応したAP F8.9bit(税込154,000円)という上位モデルもありますが、その分デカく、熱くなるので、今回はベーシックなAP 8.9bitにしました。
ここにナカミチのデッキのフロントとリヤのスピーカー出力を入力して、8chアンプをフルに使ってフロント2way+リヤ2wayを鳴らします。
あと、ヘッドユニットのところで触れました「ブルートゥースレシーバー」については、BEWITHのRT-1(税込55,000円)を使いました。
ブルートゥース受信してアナログ信号で出力するだけならば、激安で動作もアヤシイ製品がありますが、光デジタル信号で高音質出力できるのがウリです。製品価格は少々高いですが、8chアンプを確保しつつBTにも対応できる高音質システムとしては最善策でしたので、ご了解いただいてお決めいただきました。
◯スピーカー
前後ともPHASSで、すべてコンポーネント(単品売り)商品です。
フロントのツイーターはAT20B(税込20,350円)、リヤのツイーターはNT20B(税込23,100円)。
ウーファーはフロント/リヤともにFD 0486(税込56,100円)です。
この993はBOSEサウンドシステム搭載車で、ヘッドユニット出力の先に外部アンプが装備され、フロント3way/リア2wayのレイアウトになっています。
ご入庫段階では、フロント3wayのツイーターの位置にNT20B、スコーカー(ミッドレンジ)の位置にAT20B、ウーファー(ミッドバス)の位置にFD 0486が取り付けられ、中抜け&高音ギンギンの聞くに堪えない音がなっていました。(リアはFD 0486のみの1way)
これを、書き出しのようなフロント/リヤともに2wayに再配置して、DSPアンプで信号を制御して整えました♪
ものすごく希少なクルマで、よく手入れされており、とても大事にされている様子がひしひしと伝わってくる一台です。
それだけに、音質を求めるべくもない、オーディオ的にありえない接続を押し付けられてユウウツな日々を過ごしたオーナーさんはキツかったろうなぁ。。とほとばしる憤りをエネルギーに換えて、きっちり鳴るように仕上げました。
後日、DSPの再設定でお見えになられた際、「このスピーカーって、実はいい音するんですね!」とお喜びの声をお聞かせいただいて、ガッツポーズです。
それでは施工の様子をどうぞ御覧ください♪
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メインユニット
見事に復活を果たしたナカミチのデッキです。
業界人としては、懐かしさに目頭が熱くなります(T_T)
前述のごとく、車両購入時に取り付けてもらったものの、Bluetoothが使いたい意向を伝えると、Continentalへの交換を進められたそうです。
確かに、この時代の車両のインテリアにContinentalのデッキはよく似合いますし、音質にさほど拘らないのであれば、十分な性能を備えているのでいい選択だと思います。
しかしながら、今回のシステム見直しの結果、再度登板してもらうことになりました。こだわりのクルマにこだわりのデッキということで、ステキなコーディネートだと思います
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ドア外観
ドアの外観です。
ポルシェのBOSE仕様のドアです。
993までの標準オーディオのドアは、囲み写真のように、フロント2wayのウーファー(ドアスピーカー)の下半分がポケットで隠れたデザインになっていますが、BOSEサウンドシステム搭載の車両ではフロントが3way化され、ウーファー前のポケットが取り除かれています。
2つ並んだパワーウインドウスイッチの左側にあるのがツイーターで、だるまさん型のグリルの上側がスコーカー(ミッドレンジ)、下側がウーファーの位置です。
お預かり時のスピーカーボックスの状態です。
ドア外観のところでご説明したように、オリジナルの状態では、ハコの上側に中音域のスコーカー、下側には低音域のウーファーが付いています。
前後比較をかんたんに図にしてみました。
入庫時には、下段が、(2)PHASSのフルレンジスピーカー(FD 0486)に交換されています。これは妥当ですが、中音域を受け持つスコーカーがつくはずの上段は、(1)PHASSのツイーター(AT20B)に交換されています。
また、このツイーターに向かう配線には、汎用のハイパスフィルターが付けられていましたので、このハコの2つで2wayを形成しようと試みたんだろうと思います。
オーナー様に伺ったところでは、もっとなんとかならないかということで、ドア上のツイーターの位置にさらにツイーター(3)が追加された。という経緯のようです。
この回路の問題点の第一は、(1)(2)の2way化計画の段階で、超絶中抜けになっている点です。
ツイーター保護のために汎用のハイパスフィルタを入れたのはいいのですが、BOSEアンプの出力の段階で、結構ひくい周波数で帯域分割されているため、ウーファーは800Hz以下の低ーくしか鳴らないのに対して、ツイーターはハイパスフィルタの影響で、恐らく3kHz以上で鳴っているので、中音域が全く不在の状態になります。
問題点の第二は、後の施工で?が加わったダブルツイーター状態になって、高音がさらにギンギンになって、中音域の不在感が際立ったことと、(3)に再生可能周波数以下の信号が入力されてしまっている点です。
(3)のスペックは、下限1000Hz〜上限20000Hzです。アンプのハイパスのおかげで一発で壊れることはないにしても、かなりギャアギャアとがなってしまい、うるさくてボリュームを上げられない状態でした。
たかがオーディオなのかもしれませんが、オーナー様の長年のモヤモヤを考えると、この道で最高レベルの信頼を寄せられる事業者の仕事として、正直いって背信的だと思います。
今回は(2)のウーファーはそのまま使って、(1)のツイーターを(3)の位置に移動させて使い、(3)についていたツイーターをリヤのツイーターとして使う方法で進めました。
補足情報として、(2)は10センチ口径のスピーカーです。標準が13センチなので、手頃なサイズと判断して選択したものと思いますが、それなりに快適に鳴らそうと思うと、低域が不足するのは否めませんね。
なお、ボックスのスピーカーホール周りを加工すれば16.5cmまで収める事が可能です。
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ボックスデッドニング
BOSE仕様車用のスピーカーボックスをデッドニングしたところです。
このボックスは樹脂で出来ています。ドア筐体をまるまる使わずとも、それなりの容量が確保してあるので、スピーカーボックスとしては十分機能します。
ドア全体に比べればコンパクトなので、スピーディーなリズムを刻むにはむしろ好適かもしれません。
デッドニングによって、全体を均等に覆ったので、だいぶ堅牢なハコになったと思います。
前述のとおり、フロントは2way化しますので、スコーカー用のスピーカーホールは塞いであります。 -
PHASS AT20B
前掲の前後比較図の(1)に相当するツイーターです。
PHASSのツイーター・スピーカーの上位機種は、アルニコ磁石を採用しているのが特徴です。
語感のとおり、アルミとニッケルとコバルトの合金で出来た磁石で、磁場が漏れにくい点や、モーター部につきものの逆起電流を回避できる点において、オーディオに好適な磁石とされますが、丸棒型の磁石を縦に配置する構造上、一般的なモーター部に比べて背が高くなります。
よって、標準のツイーターの取り付け位置である(3)への取り付けに際して、ツイーターユニット/ドアの両方に対して、一定の加工を行います。
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フランジ加工
オーナー様のご了解をいただければ、ザクザクやってしまうのが当店の特徴です(汗)
純正のツイーター位置はかなり狭いので、周囲のフランジ部を切り落としました。
この部分は樹脂製ですので、超音波カッターで無理なく切ることが出来ます。
振動板の保護用ネットは純正のものを使用しますので、製品に付いていたものは取り外しました。 -
純正ツイーターマウント加工
純正ツイーターを固定しているマウントに加工をしているところです。
右が加工前の状態です。
このマウントをドアトリムに取り付けて、中央の丸穴にツイーターを固定する使い方が想定されています。
今回のツイーターは純正に比べて直径が大きいので、穴を拡大して使おうというわけです。
ただの平たい板に丸穴を開けるのはかんたんですが、すでに穴が空いているものを拡大するには、中心点を定めるのに工夫が必要です。
こういった場合、適当な板切れに加工対象物を固定して、板切れに中心点を定め、その中心点にホルソーの中心のドリルをあてて、丸穴を切り込んでいくと、安全できれいに仕上がります。
写真の左側が、切り取り直後の状態ですね。
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ドアトリムへの取り付け
穴拡大加工ずみマウントを取り付けたところです。
ツイーターの直径に合わせて、ドアトリム側でも穴を広げておいて、ピッタリ合わせてネジ止めします。
純正ツイーターカバーは、上下2ヶ所の爪で留まっているので、ツイーターのマグネットの逃げは爪が当たらないギリギリのところまで広げてあります。 -
インナーパネル側の加工
希少な993ターボSのドアに穴を開けてしまいました。
前述の通り、PHASSのツイーターはお尻が立派です。
マグネットが内装を飛び出てさらにドアのインナーパネルにも干渉するので、こちらもホルソーで穴をあけて逃げを造りました。
ビニールシートは、ホルソーの中心の穴を開けた後にマジックでホルソー穴の周囲をマジックで罫書いて、それよりも3mmほど大きくカッターでビニールのみを切り抜きます。
切り抜いた部分を清掃、脱脂した後にホルソーで穴をあけて、タッチアップペイントで防錆処理を済ませてから、アルミテープを使用して雨水の侵入を防ぐように小部屋を造りました。
このエンクロージャー的な部分を樹脂で作ったりすると、もっともらしくていいのですが、総合的に考えると、コストを掛けるほどのメリットはありません。念を入れて、アルミガラスクロステープを3枚重ねてカップ状に整形しました。
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リア純正ツイーター
最初の現状確認の時の写真です。
左手で持っているブラケット側にくっついてるのが、純正ツイーターです。
回路的には、アンプから来た1chが、ウーファーに入って、ハイパスフィルターを介してツイーターに入るようになっています。
ごくごく一般的な接続方法です。
この写真。実は間違い探しのようなところがありまして、、。実は(奥に見える)ウーファーユニットは左のブラケットに固定するのが正式なのですが、なぜかリヤトレイ側に直付けされていました。
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PHASS NT20B
ドアのところの図で示した(1)に固定されていたツイーターをリヤのブラケットに固定したところです。
このツイーターは背の高いアルニコ磁石をつかっていないので、無加工で取り付けできました。
固定はいつも使用している接着剤です。
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リアスピーカーブラケット
ブラケットを前から見たところです。
左側のツイーターは地味、、ですが、PHASSのツイーターです。
右側の「穴」に見えるところ。
よく見ていただくと、純正スピーカーの真ん中がくり抜かれていて、周囲のフランジ部分だけが残されています。
なぜこういう加工を行ったのか、真意はわかりませんが、なかなか独創的ではあります。
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助手席シート下
施工の終わった助手席シート下の様子です。
BOSEアンプを取り外した場所に、audisonのDSPアンプと、BEWITHのBluetoothレシーバーを設置しました。
写真中央のaudisonロゴがあるのがDSPですね。
ダッシュボードの1DINデッキから出たフロント/リヤ出力を入力して、フロント2way・リヤ2wayの8ch分のスピーカーケーブルが伸びていってます。
左側の黒光り(一応ピアノブラック)しているのが、Bluetoothレシーバーです。
DSPとは、角型光ケーブル(SUPRA ZAC TOS 0.3m)で接続されています。
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audison DRC-MP
DSPコントローラーの設置状況です。
多くのスーパーカーオーナー同様、車室内の見える部分に何も設置したくないというご意向で、DSPのコントローラーをドアポケット内に設置しました。
ナカミチのデッキからの出力は、デッキのボリュームで音量を変えられますが、DSPに直接入力するソースに関しては、写真のコントローラーで調整することになります。
iPhoneなどのDAPをデジタル接続する際は、ソース側にボリュームの概念がないので、完全にこのコントローラーのみで調整することになりますが、ブルートゥースレシーバー経由の場合は、ソース端末側でもボリューム調整は可能です。
ただ、(1)元ネタの情報量は最大、(2)増幅は最小限に。がセオリーですので、ソース端末は大きめにしておいて、コントローラーのつまみは控えめにするのが音質的には最善。ということになります。 -
作業後記
今回はポルシェ911(993)の事例紹介でした。
素の状態からのサウンドアップ♪ではなく、サウンドレスキュー??的なアプローチでしたので、ちょっと分かりにくいところがあったかも知れません。
今回はあらかじめ付いていた10センチウーファーを活かす前提でしたので、フロント・リヤともに10センチウーファーとツイーターの2way構成となりましたが、素の状態のBOSE仕様である場合は、16.5cmウーファーとの組み合わせでセットアップすることが可能です。
BOSEセパレートアンプの扱いについては、文中でもお伝えしましたとおり、アンプ側で帯域分割した信号を出力する仕組みになっているので、すんなりとは行きません。
技術的には、チャンネルミキサーといって、分割された信号を合流させてフルレンジ信号を合成する機器もあるにはあるのですが、ローレベルで出力されるので、その信号をさらに増幅する必要があります。
純正の回路を活かすというコダワリは果たせるものの、アンプ→チャンネルミキサー→アンプ。。という格好になり、そんなにエレガントでもないので、セパレートアンプは潔くスキップしてしまうのが、コスト的にも音的にもベストです。
993までの水平基調ダッシュボードの1DIN仕様であれば、外観重視で上出のコンチネンタルや、ハイコスパのカロッツェリアDEH-970をヘッドとして、フロント2way+パワードサブウーファーあたりが最もリーズナブルなパターンです。
また、今回のようにアンプ内蔵DSPを入れるとなれば、8chまではリーズナブルな機種が豊富にありますし、音場の最適化という成果が加わるので、さらにコスパが上がるという解釈も成り立ちます。
いずれにしましても、オーナー様のご希望とご予算に応じて、ベストに感じていただけるプランを考えさせていただきます。
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